大津市長・佐藤健司が進める幼稚園教諭の賃下げ市長給与アップの矛盾

「保育士に合わせて幼稚園の先生の給与を下げる」──そんな条例案が、滋賀県大津市議会に提出され、大きな波紋を呼んでいます。
この記事では、大津市長・佐藤健司氏が提出した幼稚園教諭の賃下げ条例案の内容と背景、そして「市長自身の給与引き上げ」との対比について、毎日新聞・京都新聞・大津市の公式文書をもとに検証します。
「なぜ現場の先生が報われないのか」と感じている方、この問題の全体像を正確に把握したい方に向けて書きました。
大津市の幼稚園教諭賃下げ条例案とは?内容をわかりやすく解説

2026年2月19日に開催された大津市議会2月通常会議で、市立幼稚園教員の給与体系を見直す条例改正案が提出されました。
【悲報】「幼稚園教諭の賃金が保育園保育士より高いので、幼稚園教員を賃下げする」
と意味不明な条例案が滋賀県大津市議会で提出される。
すでに待機児童数が2年連続全国最多。
初任給1万円下げ、勤続12年の場合は年収40万賃下げへ。なお、大津市長と議員の報酬は13年ぶりに引き上げが決定済み。
— ゆな先生 (@JapanTank) February 20, 2026
毎日新聞の報道によれば、条例案の骨子は以下のとおりです。
- 対象者:市立幼稚園教員 約400人
- 内容:保育士の給与水準に合わせて幼稚園教諭の給与を引き下げ
- 初任給:月額約1万円の引き下げ
- 勤続12年の場合:年収40万円以上の減収(県教組試算)
- 施行予定:可決されれば2026年度から
これに対し、市の元教員ら有志でつくる「就学前教育を守る会」(大塚清高代表)が請願を提出。
反対のオンライン署名は825筆、滋賀県教職員組合も6,042筆を市に提出しています。
現場の声として、毎日新聞はベテラン幼稚園教員の証言を次のように報じています。
私たちは教師の責任を持って子供たちを教えている。プライドもあるから、お給料が下がったとしても力を抜くことなんてできない。若い仲間は、大津で今後も働き続けるモチベーションを保ち続けられないかも。自分たちは大切にされてないと感じている。
行政の説明と現場の怒りの「ズレ」

この問題を理解するうえで重要なのが、行政の説明と現場・市民の受け止めのズレです。
大津市の行政側は、今回の条例案の目的を「教育保育職制度の導入」と説明しています。
2026年度から保育士と幼稚園教員を統合した「教育保育職制度」を導入し、幼稚園と保育所の間で人材を柔軟に異動・配置できるようにする──それに合わせて給与体系を統一する、というのが行政の論理です。
市幹部は2025年12月の市議会一般質問で次のように答弁しています。
待機児童解消が課題である中、幼稚園教員・保育士の柔軟な配置を可能にし、在職者との均衡を図る。
大津市議会一般質問答弁(2025年12月)URL未確認
しかし現場・市民が問題視しているのは、給与統一の方向性が「下方向」だという点です。
幼稚園教諭と保育士の初任給の差は最大約2万円。
統一するなら保育士側を上げるべきでは?──SNS上では「違う。逆だよ。保育士の給与を上げるんだよ」という声が相次ぎました。
大津市の待機児童問題──「全国最多」の深刻な現実
【悲報】幼稚園教員の賃下げに邁進する大津市の市長、自民党と公明党の支援で当選し、コロナ禍で自身の給与を300万円引き上げる条例案を提出し可決させていたことが発覚wwww https://t.co/VP1OdUb9X9 pic.twitter.com/YJauqZN0Eo
— Orange Sunset -橙日没- (@Ootani_Acid) February 20, 2026
大津市の待機児童数は、2024年4月時点で184人、2025年4月時点で132人と、2年連続で全国最多という深刻な状況です。
全国の待機児童は2,254人まで減少し、100人以上の自治体はほぼなくなりつつある中、大津市は突出した数字を抱えています。
本来であれば、現場の教諭・保育士の処遇を改善することで人材を確保・定着させることが、政策的に最優先されるタイミングです。
しかし今回の条例案に対して大津市議会の資料自身が、
「制度変更により幼稚園教員の処遇が低下することはモチベーションを損ない、生活基盤の不安定化を招くおそれ」
があると認めており、教職員組合のアンケートでは「約2割が離職または離職を検討」と回答したことも明らかになっています。
行政が自ら「離職リスクがある」と認識しながらも条例案を提出したという事実は、重く受け止める必要があります。
市長・副市長の給与引き上げ──「二重基準」と呼ばれる理由

この条例案が大きな批判を浴びている背景には、市長・副市長の給与引き上げという事実があります。
年間60万円の引き上げですかそうですか pic.twitter.com/GelBtbKCVi
— 天秤 (@tenbin1028) February 20, 2026
大津市が提出した公式文書「大津市長及び副市長の給与に関する条例の一部を改正する条例」によれば、令和8年(2026年)4月1日施行で以下の変更が行われます。
- 市長月額:1,032,000円 → 1,082,000円(+50,000円)
- 副市長月額:897,000円 → 918,000円(+21,000円)
- 施行日:令和8年4月1日(2026年4月1日)
- 提案者:大津市長 佐藤健司
京都新聞の報道(2025年10月)によれば、この引き上げは「13年ぶりの改定」です。
さらに、佐藤健司市長は2020年3月──就任直後のコロナ禍の時期に──前市長が行っていた給与30%カットを10%カットに緩和する議案を提出・可決させています。
前市長比で市長の年収は約300万円増加したこの変更は、当時地元メディア「ウオッチ大津」が「厳しい財政状況の中で市民への説明なしに可決された」として問題視しています。
現場の幼稚園教諭の給与は下げながら、市長・副市長の給与は引き上げる──この構図が「二重基準」としてSNSで拡散し、批判が集中した最大の理由です。
佐藤健司市長とは──経歴と政治スタンス

この問題の当事者である大津市長・佐藤健司氏のプロフィールを整理します。
- 生年:1973年(愛知県岩倉市出身)
- 学歴:同志社大学法学部卒業(1996年)
- 職歴:NHK記者(1996年入局)→ 大津市議会議員(2004年初当選・2期)→ 滋賀県議会議員(2011年初当選・3期、途中から自民党公認)
- 市長就任:2020年1月(自民・公明系市議の支援で初当選)、2024年1月再選(2期目)
- 政治スローガン:「市民が主役の大津市政」
元NHK記者という経歴を持ち、「市民が主役」を掲げて市長に就任した佐藤氏ですが、今回の条例案をめぐっては現場や市民への説明・対話が不十分との批判が上がっています。
2025年9月に給与見直しの数字が現場に伝えられてから、12月の説明会を経ても労使交渉で合意に至らないまま条例案が提出されたことが、現場の不信感を高めています。
【独自考察】佐藤健司市長の「均衡論」から読み解く今回の条例案の真意
今回の条例案について、筆者は単なる「財政上の均衡化」ではなく、より構造的な問題を感じています。
「幼稚園・保育所の一体化」という政策目標自体は、多くの自治体が進めている方向であり、それ自体を否定するつもりはありません。
しかし問題は「なぜ統一を下方向で行うのか」という点です。
コロナ禍での市長給与の引き上げと、今回の現場職員の賃下げを並べると、見えてくるのは「首長・特別職の処遇は引き上げ、現場コストは圧縮する」という一貫した方向性です。
大津市は自ら「離職リスクがある」と認めながら条例案を提出しました。
これは「人材確保よりも給与体系の整理を優先した」という行政の価値判断の表れではないかと、筆者は見ています。
「保育園落ちた日本○ね」という言葉が広まったのは2016年──ちょうど10年前のことです。
あれから10年、待機児童の問題が最も深刻な自治体で起きているこの状況を、全国の保育・教育関係者は他人事として見ることはできないはずです。
この条例案が可決されれば、同様の「下方均衡」の論理が他自治体に波及する可能性も否定できません。
まとめ:大津市幼稚園教諭の賃下げ問題が示すこと

今回の問題のポイントを整理します。
- 大津市は幼稚園教諭(約400人)の給与を「保育士水準に合わせて引き下げる」条例改正案を提出
- 初任給月額約1万円減、勤続12年で年収約40万円以上の減収(県教組試算)
- 大津市はすでに待機児童2年連続全国最多で、人材確保が急務の状況
- 市自身のアンケートで約2割が「離職または検討」と回答しているにもかかわらず提出
- 同時期に市長月額+5万円・副市長月額+2.1万円の給与引き上げも進む(13年ぶり改定)
- 条例案は2026年2月大津市議会で審議中
「下方向の均衡」で現場を疲弊させることは、大津市の子育て環境をさらに悪化させる可能性があります。
「就学前教育を守る会」への賛同・署名、大津市議会への意見提出など、関心のある方はぜひアクションを検討してください。
この問題の続報は随時更新していく予定です。









